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平成13年度の本会議所事業
 平成13年度のわが国経済は、世界的なITバブル崩壊の影響から、デフレ・スパイラルの瀬戸際に立たされる深刻な事態に陥った。とりわけ、大阪・関西経済は全国に比べ失業率が高水準で推移するなど、厳しい経済情勢が続いた。
 このため本会議所は、構造改革の実施による持続的な景気浮揚基盤の整備や税制改正、中小企業対策の拡充などに関する具体的な提言・要望活動を行った。その結果、6月に政府の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」が策定され、10月に中小企業・雇用対策を柱とする「第1次補正予算」、2月に需要喚起に向けた「第2次補正予算」が編成された。また、「同族会社の留保金課税の見直し、事業承継税制の充実、連結納税制度の導入」などが実現した。担税力のない中小企業に負担増となる「外形標準課税」についても、導入反対を強く働きかけた結果、前年度に続き導入が見送られた。このほか、中小企業金融、今後の労働政策、商法の改正等について政府等関係先に要望した。その結果、「売掛債権担保融資保証制度の創設」、「3年の有期雇用契約対象者の拡大」、「株式分割の際の純資産額規制撤廃」などが認められた。

 このような提言・要望活動を行う一方、本会議所は、「交流から創造へ」をスローガンに、「都市」、「産業」、「人」の3つの側面から「大阪経済新生」に向けて以下の事業を展開した。

 まず「都市」の面では、集客力・都市機能の向上に向けた取り組みを行った。昨年3月に開業したユニバーサル・スタジオ・ジャパンを中核にして、大阪の知名度向上と映像関連産業の集積に繋げるため、「大阪ロケーション・サービス協議会」の活動を強化した。映画・TVドラマなど56作品に撮影協力したほか、大阪紹介ガイドブックの作成、撮影協力可能施設やエキストラ登録などを行った。また、大阪プロモーションビデオ制作のため、南カリフォルニア大学の学生を招聘した。
 また、地元自治体などと共に「御堂筋活性化アクションプラン」を4月にとりまとめ、「御堂筋フェスティバル」などのイベントを行った。近隣高校との交流やインターネットの活用など、商店街活性化のための事業も積極的に展開した。さらに、容器包装リサイクル法施行にもとづき、プラスチック・リサイクル事業を円滑に進めるため、事業主体となる会社への出資を行った。
 一方、9月開催の世界観光機関(WTO)大阪総会に協力し、海外メディアや観光関係者に大阪の魅力をPRしたほか、外資を大阪に呼び込むため、「大阪外国企業誘致センター(O-BIC)」を4月に開設したところ、中国、韓国、米国など外国企業計13社の大阪誘致に成功したが、2008年大阪オリンピックの誘致は実現しなかった。
 関西国際空港については、2期事業推進のため、政府関係機関に対し精力的な要望活動を行うとともに、空港会社の経営形態の「上下分離方式」実現に向けて各関係機関に働きかけた。
 
 次に「産業」の面では、IT・バイオ分野を中心にベンチャービジネスの育成・振興への取り組みを強化した。IT分野では、「情報家電&ウェブ・携帯ビジネス振興フォーラム」の運営により、ITベンチャーの発掘、育成をはかった。また、次世代携帯電話サービスによる新たなビジネスモデルを探るため、「欧州携帯ビジネス視察団」を9月に派遣したほか、大学のもつ最先端のワイヤレス技術の産業界への移転をめざした「産学連携モバイル技術フォーラム」を10月に開催した。さらに、中小企業のIT化を支援するため、インターネットを活用した取引支援ネットワーク「ザ・ビジネスモール」の企業情報を29万件に拡大し、各種電子商取引市場を開設するなど、総合的ビジネス・ポータルサイトとして機能拡充を行った。流通業のための企業間情報通信サービスシステムである「大商VAN」も一層の充実をはかった。
 バイオ分野では、大阪・関西におけるバイオ関連機関の集積を背景に、本会議所が中心となり「関西バイオ推進会議」を8月に設立した。同時に、大容量の通信回線で各研究機関を結びバーチャルな創薬研究所を作る「関西バイオ情報ハイウェイ構想」の推進に取り組んだ。また、大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点形成を推進することが国の都市再生プロジェクトとして認められ、政府、自治体、本会議所などで組織する「大阪圏ライフサイエンス推進協議会」が11月に設置された。さらに、「バイオビジネスコンペJAPAN」の成果として、バイオベンチャーの起業5件、技術移転2件が実現した。
 このほか、ハイテクベンチャーの国際商談会「グローバル・ベンチャー・フォーラム」(GVF)を継続開催したところ、内外の35社に対して495件の個別ミーティングがあり、20件近い成約あるいは成約見込みがあった。また、新規開業希望の商いベンチャーを集めて「あきない百稼店」を1月に開催した。さらに、次代の大阪経済を担う企業等に本会議所議員を中心にアドバイスを行う「大商起業家発見塾」を継続実施したほか、創業やIT活用を支援する「大阪中央地域中小企業支援センター」の体制を強化した。
 中小企業の経営革新に資する事業に関しては、環境の国際規格ISO14001認証取得支援事業を継続実施したほか、環境ビジネスへの取り組みを啓発する「環境経営講座」を開催した。「福祉産業フォーラム」、「ケアサービス事業者交流会」等の開催により、福祉・介護ビジネスの取組み支援も行った。一方、新分野進出などを支援するため、「非公開企業のM&A市場」を運営し、新たに2件が成約した。販路開拓を支援する展示商談会「中小企業フェスタ」を11月に開催したほか、技術力向上をはかる「産学官技術移転フェア」を開催し、「技術交流クラブ」を運営した。新たに電子メールによる経営相談サービスを開始し、中小企業からの種々の相談に対応した。
 国際経済交流の推進については、16回目を迎えた「世界ビジネス・コンベンション(G-BOC)」の会期中に1,340件の商談が行われ、そのうち「成約ないし成約可能性あり」が278件にのぼる成果をあげた。また、ネット上でビジネス機会を提供する「サイバーG-BOC」を本格導入し、国内登録企業に海外への販路拡大を支援した。一方、日中国交正常化30周年を迎え、関西の10経済団体からなる「関西訪中代表団」を3月に派遣して、朱鎔基首相はじめ中国政府首脳と会見し、関西と中国の新しいパートナーシップの構築に努めた。また、「韓国経済視察団」を6月に派遣し、第2回世界商工会議所大会に参加した。
  
 第3に「人」の面では、「大阪企業家ミュージアム」を6月にオープンし、大阪を舞台に活躍した数多くの企業家たちの紹介を通じ、企業家精神の高揚、次代を切り拓く人づくりをめざした。本ミュージアムは、(1)大阪の企業家精神のルーツを映像で紹介するコーナー、(2)企業家をパネルやゆかりの展示品で紹介する「主展示コーナー」、(3)企業家の事績をパソコンで検索できる「企業家デジタルアーカイブ」などで構成。このほか、起業家育成講座「大商ベンチャースクール」や既存企業の再活性化をめざす「第二創業塾」を開催したほか、大学生の仕事観・就職観を養う「仕事を考える」セミナーを開催した。また、小学生の出店体験事業「キッズ・マート」の実施校を拡大したほか、高校生のインターンシップや社会人特別講師の学校派遣などの事業を実施した。
 また、会員企業の人材育成支援のため、企業経営・実務に役立つ各種講座・講習会を拡充するとともに、新規の「国際会計検定」をはじめ各種技能検定事業を実施する一方、人材の確保・流動化を支援するため、求人・求職情報のマッチングの場となる「大商人材情報交流プラザ」の運営を行うとともに、「人材情報交流会」および「大商就職フェア」を開催した。

 以上の取り組みを展開すると同時に、会員第一の観点に立ち、多様な交流機会を創出するため、「大商交流パーティー」をキックオフ・イベントとして8月に開催し、「月例ビジネス交流会」や「パイロット研究会」、「大商ビジネスリンク」などビジネス交流の新プログラムを次々と実施した。また、会議所活動の基盤である部会においても部会同士の交流事業を積極的に展開したほか、会員交流や創業支援を目的に「平成13年度会員の集い」を開催し、調達見本市「買いまっせ!売れ筋商品発掘市」を実施した。
 また、会員サービス事業の充実を図るため、アウトソーシング型福利厚生サービス事業「商工会議所CLUB CCI」や各種共済制度、各種健康管理事業の普及活動を行った。一方、旬刊紙「大商ニュース」、季刊誌「チェンバー」、「大商メールマガジン」に加え、「大商ホームページ」の充実や「電子メール配信サービス」を活用して各種情報の発信・提供に努めた。
 この間、会員増強運動の名誉サポーターに落語家の桂三枝氏を迎え、運動の気運を盛り上げた。その結果、1,567件の新規加入があったものの、長引く景気低迷の影響により、年度末の会員数は昨年度末より3,033件減少し、33,306件となった。
 
 企業経営環境が厳しさを増すなか、商工会議所をはじめ経済団体は総力を結集して政策提言力や事業推進力を高めることにより、地域経済の活性化と会員企業の経営支援に全力を傾注していくことが求められている。こうした状況のもと、本会議所は3月、「より強い経済団体」の実現を目指し、(社)大阪工業会との平成15年度中の統合に向け、具体的な検討に入ることになった。

2003.4.1更新
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